さまざまな現場に導入され始めた『パワーアシストスーツ』!導入によるメリットとは?

近年、福祉や介護、農業または建設の現場などで導入が始まっている『パワーアシストスーツ』はご存知でしょうか?

パワーアシストスーツは、重いものを持ち上げる際など、力仕事をするときに機械の力を使って人間の動作をアシストしてくれる画期的なスーツで、人が機械を装着することで、腰などへの負担を大幅に軽減してくれる上、腰痛などに対する心理的な負担まで軽減してくれると言われています。テレビなどの大手メディアなどでも、実際にパワーアシストスーツを着用して作業を行っている現場を取材することが増えていることから、使用したことはないもののその存在は知っているという方は増えていると思います。

パワーアシストスーツは、荷物の運搬や介護現場など、重労働を課せられる作業において、作業者の負担を大幅に軽減することができる技術として注目されているだけでなく、災害現場での活用が始まっているなど、さまざまな業界から注目を集めるようになっています。
そこでこの記事では、パワーアシストスーツがどのようなものなのか、また実際に導入した場合に得られるメリットなどを簡単に解説します。

パワーアシストスーツとは?

それではまず、『パワーアシストスーツ』がどういったものなのかについて簡単に解説していきましょう。特許庁によると、パワーアシストスーツは以下のように定義されています。

パワーアシストスーツ(外骨格(exoskeleton)ともいう)は、身体に装着し、装着者又は作業対象に対して作用することで、身体動作の支援、身体機能の改善・治療等を行うものである。
引用:特許庁資料より

パワーアシストスーツは、人間の動きを機械の力でパワーアップさせたりサポートしたりして、その作業を支援してくれるというものです。なお、義手・義足などの身体機能の欠損を補うもの、工具や車椅子などの歩行代替手段、コルセットのような矯正器具についても、ある一面では身体機能の支援を行っていると言えるのですが、パワーアシストスーツの範囲には含まないとしています。

少子高齢化が進む日本では、介護市場の労働力不足が懸念されており、ベッドの移動などで要介護者を抱き上げなければならない場面も多く、介護者の体力的負担の軽減などが大きな課題となっています。そこで、非力な人間でもパワーアシストスーツを着用することで、要介護者を抱きかかえて運べるようになるなど、介護現場での作業負担を大幅に軽減できるということから、急速にパワーアシストスーツの開発が進んでいます。さらに、建設現場や運送業界における荷物の積み込みなど、肉体的負担が大きな作業現場での運用が始まっています。
なお、2018年6~7月に発生した西日本豪雨では、がれきや泥の撤去など、物を持ち上げたり運んだりする重労働に装着型のパワーアシストスーツが使用され、作業者の負担が大幅に軽減されたと、災害復旧現場でも大きな注目を浴びています。

参照:2018年西日本豪雨でもパワーアシストスーツが活躍

パワーアシストスーツ導入のメリット

現在、さまざまな現場で活躍しているパワーアシストスーツは、機械を装着していても「動きやすくパワーがでる」という、非常に有用なアイテムになっています。一昔前までに存在したタイプは、作業支援のためのパワーは得られるけど、とても動きにくく実際の作業現場では使いにくいといった弱点があったそうです。それが、現在では人間工学という考え方が普及してきており、機械を装着するとパワーが出るうえに人間の動きを阻害しないという製品が開発されています。

こういったパワーアシストスーツを導入することで、以下のようなメリットが得られます。

参考:人間工学とは?

身体的な差をなくすことができる

パワーアシストスーツを装着することで、身体的な差を無くすことが可能です。例えば、体力や筋力は、同性でも個人差がありますし、男性と女性となるとさらに大きな差が生じます。そのため、作業内容によっては、人によって難易度に格差が生じてしまいます。
しかしパワーアシストスーツを導入すれば、性別の違いによる体力や筋力の違いすら乗り越えられる可能性があります。重たい荷物の持ち運びなど、筋力などに差がある人でも、パワーアシストスーツを装着することで、同じ作業ができるようになると期待できます。つまり、今まで男性がメインで行っていた作業でも、女性が同じように作業ができるようになるなど、人手不足解消にも役立つと考えられています。

疲労などによる労働災害の防止

パワーアシストスーツを装着することで、重量物でも軽々と持ち運びが可能になることから、怪我の防止につながると言われています。重い荷物を持ち上げたり下ろしたりする動作は、人間の腰や膝、手首などの関節に大きな負担を与えます。実際に、ちょっとした荷物を持ち上げようとしたときに、「ぎっくり腰になってしまう」「手首を痛めてしまった」などと言った経験がある人は多いのではないでしょうか。また、人は年齢を重ねていくと徐々に筋力が衰えてしまい、今までは軽々と持ち運びができていたような物でも、困難になってしまうケースも少なくありません。

パワーアシストスーツは、身体動作の支援を行ってくれるもので、関節や筋肉にかかる負荷を大幅に軽減してくれるため、作業による健康被害の可能性を減らすことが期待できます。さらに、運送業などは、毎日重量物を持ち運ばなければならない仕事ですので、疲労が蓄積してしまいやすいと言えます。作業自体はシンプルなのですが、疲労の蓄積から思考力が鈍ってしまい、大きな事故につながってしまうことも考えられます。
パワーアシストスーツを導入すれば、日々の疲労を軽減できますので、各作業時だけでなく、継続作業による疲労蓄積からの労災まで防止することが期待できると言われています。

作業効率の向上

現在のパワーアシストスーツは、装着することで人の動きを阻害することなくパワーが得られるようになっています。したがって、重量物の積み込みなどの作業が効率的に行うことができるようになり、時間短縮することが期待できます。
実際に、あるメーカーが行った実証実験では、パワーアシストスーツを装着することで、作業効率が37.7%向上したというデータ※1が存在します。作業効率の向上は、それだけ短時間で作業が完了するということですし、企業の利益上昇にも役立ってくれると考えられます。

参考データ:※1パワーアシストスーツ実証実験データ

まとめ

今回は、近年さまざまな業界で導入が始まっているパワーアシストスーツの基礎知識について解説してきました。この記事でご紹介したように、パワーアシストスーツを装着することで、筋力や体力などに個人差がある場合でも、同じ作業を任せることができるようになりますので、人手不足や作業効率向上のための対策としては非常に役立つ機械になると考えられるでしょう。

ただし、現状は、以下のような問題点も存在すると言われていますので、その点は注意しておきましょう。

  • まだまだ高額な機械なので、複数台の導入には多額のコストがかかる
  • 補助してくれる作業がまだ限定されている
  • パワーアシストスーツ自体が重いので、女性などは装着を負担に感じる場合がある
  • パワーアシストスーツ分の幅が出るので、動作の際にスーツの硬い部分をぶつけてしまい、何かを傷つけてしまう不安がある
パワーアシストスーツ倉庫工場物流