今回は、倉庫業界における新型コロナウイルス対策について、日本倉庫協会が公表した感染予防対策ガイドラインをご紹介します。
日本国内ではある程度感染拡大が落ち着いてきたこともあり、5月末には全国的に発令されていた緊急事態宣言も解除されています。しかし、順調に感染者が減少傾向にあった国内でも、6月末ごろより再び増加に転じてしまい、2020年7月17日現在東京都では1日に200人以上の感染者が確認されるような状況になっています。テレビの報道などでは、キャバクラやホストクラブなど、いわゆる『夜の街』が感染の場となっているという報道がなされているのですが、感染者の詳細を確認してみると、普通のオフィス内でもクラスターが発生していることもあり、「外食を控えているから私は大丈夫だ!」などと決して言えないような状況になっていると考えられます。
倉庫業界などで考えた場合、ロボットなどの導入による作業の自動化が進んでいるとは言われるものの、まだまだ人力での作業が中心で施設内に多くの人間が働いているという施設も非常に多いです。さらに、今回の新型コロナウイルスでは、『外出自粛』が求められていることもあり、通販でお買い物をする方が増加していることから、新型コロナウイルス問題以前よりも忙しくなっているという物流倉庫は多いのではないでしょうか?
それでは、こういった倉庫業界で、新型コロナウイルスから従業員を守るためにはどのような対策を行えば良いのでしょうか?この記事では、日本倉庫協会が公表した『新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン』をご紹介しますので、自社の施設で行うべき新型コロナ対策を進めましょう。
Contents
倉庫における新型コロナ対策とは?
それでは、日本倉庫協会が公表した『新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン』をご紹介していきたいと思います。今回の新型コロナウイルスについては「人との接触を減らす」ということが、最も効果的な手法とされているため、多くの企業がリモートワークを導入し、インターネットを介してコミュニケーションを行うという手段をとっています。
しかし、完全な自動化がまだ難しいとされる倉庫業界などでは、人間の手による作業が必要不可欠な場面も多く、リモートワークの導入が難しい業界でもあるのです。そこで、施設で働く従業員の安全を守るためには、さまざまなルールや制約をつくる必要があるのです。
以下で、自社倉庫でクラスターを発生させないために講じるべき対策をご紹介していきます。
従業員の健康管理
まず、非常に重要になるのが出勤してくる従業員の健康状態の管理です。施設内で消毒や換気など、さまざまな対策を行ったとしても、出勤してくる従業員がすでに感染していたのでは意味がありません。従業員の健康状態を把握するためには以下のような対策が必要とされています。
・ 従業員(雇用関係の有無に関わらず、事業所内で勤務する者)に対し、出勤前に、体温や症状の有無を確認させ、発熱や咳・咽頭痛があるなど体調の悪い者は自宅待機とする。また、勤務中に体調が悪くなった従業員も、直ちに帰宅させ、自宅待機とする。
・ 発熱や体調が悪く自宅待機となった従業員には、毎日、健康状態を確認した上で、症状に改善が見られない場合は、医師への相談を指示する。症状が改善した場合であっても、出社判断を行う際には、学会の指針※1などを参考にする。
・ 政府から入国制限されている、または入国後の観察期間を必要とされている国・地域などへ 14 日以内に渡航した者に対し自宅待機を指示する。また、当該地域に在住する者との濃厚接触がある場合も同様に扱う。
引用:倉庫業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン
上記に加えて、出勤した従業員の体温を施設に入場する前に計測し、一定以上の熱がある人員は直ちに帰宅させるなどと言う対策もオススメです。
従業員の通勤管理
新型コロナウイルスの感染拡大もあり、リモートワークを導入する企業が急速に増えています。これに加えて、出勤時には公共交通機関を使用せず、自家用車での出勤を励行するなどの対策を行う企業も多いです。日本倉庫協会が公表したガイドラインでは以下のような対策が推奨されています。
・ 管理部門などを中心に、在宅勤務(テレワーク)が可能な従業員には、これを励行する。
・ 公共交通機関を使わずに通勤できる従業員には、道路事情や駐車場の整備状況を踏まえ、通勤災害の防止に留意しつつ、自家用車、自転車、徒歩などを励行する。
・ それ以外の従業員についても、時差出勤の励行、従業員用の通勤バスの運行などにより、公共交通機関の利用の抑制を図る。また、公共交通機関を利用する従業員には、マスクの着用や、私語をしないこと等を徹底する。
引用:倉庫業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン
倉庫業界では、仕事の特性上、どうしてもリモートワークは不可能…という職種も存在するでしょう。しかし、可能な限りはリモートワークを導入し、施設内で勤務する従業員の数を減らすというのが、有効な新型コロナウイルス対策になるでしょう。
勤務時の対策について
実際に作業に従事する場合にもさまざまな対策が必要とされています。例えば、うがいや手洗いはさまざまな感染症予防に効果的と言われていますし、多くの企業では作業を中断することになっても定期的なうがいや手洗いを推奨している場合も多いです。倉庫などで考えた場合、外から入ってくる荷物の梱包材にウイルスが付着している可能性もありますので、マスクや手袋の着用、定期的なうがいが大切になるでしょう。
・ 従業員に対し、始業時、休憩後を含め、定期的な手洗いを徹底する。このために必要となる水道設備や石けんなどを配置する。また、水道が使用できない環境下では、手指消毒液を配置する。
・ 従業員が、可能な限り、2メートルを目安に、一定の距離を保てるよう、作業空間と人員配置について最大限の見直しを行う。
・ 従業員に対し、勤務中のマスク、手袋等の装着を促す。特に、複数名による共同作業など近距離、接触が不可避な作業工程では、これを徹底する。ただし、作業量が多く、作業が長時間に及ぶときはマスクによる呼吸困難に注意する。
・ 直交代に係る交代時間を長く設定する、ロッカーを分ける等により、混雑や接触を可能な限り抑制する。自家用車での通勤者など、自宅で作業服に着替えることが可能な従業員には、これを励行する。
・ 朝礼や点呼などは、小グループにて行うなど、大人数が一度に集まらないようにする。
・ 作業エリアごとに区域を整理(ゾーニング)し、従業員が不必要に他の区域との往来しないようにする。また、一定規模以上の事業所などでは、シフトをできる限りグループ単位で管理する。
引用:倉庫業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン
作業中の従業員にマスクの着用を義務付けている倉庫は多いことでしょう。ただし、マスクの着用は、喉の渇きに気付きにくくなることから熱中症に注意が必要という情報があります。長時間マスクを着用して作業させる場合、適度な休憩や水分の補給にも注意しましょう。
休憩・休息について
多くの人間が集まる施設では、従業員の休憩時のルールも必要になります。新型コロナウイルスが登場する以前であれば、小さな休憩スペースで多くの人員が食事をとるような場面も珍しくなかったのですが『3密の防止』が重要視される今、狭いスペースに多くの人員が集まることは危険とされているのです。
したがって、広い食事スペースの確保が難しい施設などであれば、時間をずらして休憩させるなど、新たなルール作りが必要になるでしょう。
・ 休憩・休息をとる場合には、屋外であっても2メートル以上の距離を確保するよう努める、一定数以上が同時に休憩スペースに入らない、屋内休憩スペースについては換気を行うなど、3つの密を防ぐことを徹底する。
・ 喫煙者が感染した場合は重症化リスクが高い傾向があるので禁煙を推奨する。
・ 食堂等での飲食についても、時間をずらす、椅子を間引くなどにより、2メートル以上の距離を確保するよう努める。施設の制約等により、これが困難な場合も、対面で座らないようにするかアクリル板などで遮蔽する。
引用:倉庫業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン
換気や人が触れる器具の消毒について
新型コロナウイルス対策では、換気や消毒が重要とされています。倉庫などでは、不特定多数の人が直接手で触れる器具も多いですし、感染予防対策としては定期的な器具・設備の消毒が大切になります。その他にも、以下のような対策が必要とされています。
・ 事業所内のタッチパネル、レバーなど、作業中に従業員が触る箇所について、作業者が交代するタイミングを含め、定期的に消毒を行う。
・ 個々の従業員が占有することが可能な器具については、共有を避ける。共有する器具については、定期的に消毒を行う。
・ 作業服などの衣類はこまめに洗濯する。
・ テーブル、ドアノブ、電話、電気のスイッチなどの共有設備については、頻繁に清拭消毒を行う。
・ 洗面所備品、トイレ、ドアノブ、ゴミ箱、電話などの共有設備については、頻繁に洗浄・消毒を行う。
・ ゴミはこまめに回収し、ビニール袋に密閉する。ゴミの回収など清掃作業を行う従業員は、マスクや使い捨ての手袋を着用し、作業後に手洗いを徹底する。
・ 建物全体や個別の作業スペースの換気に努める。
引用:倉庫業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン
部外者の立ち入りについて
新型コロナウイルス対策としては『人との接触の削減』が非常に重要とされているため、可能な限り施設への部外者の立ち入り禁止が求められます。例えば、一般向けに施設見学などを行っている場合、当面の間は中止する、業者との打ち合わせなどは可能な限りwebコミュニケーションツールを活用するなどが推奨されます。
・ 一般向けの施設見学など、不要不急な部外者の立ち入りは行わない。
・ 搬入、搬出など、事業活動の維持に不可欠な部外者の立ち入りについては、当該部外者に対して、従業員に準じた感染防止対策を求める。
・ このため、あらかじめ、これらの部外者が所属する企業等に、事業所での感染防止対策の内容を説明する等により、理解を促す。
引用:倉庫業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン
従業員の意識向上
最後は、従業員の新型コロナウイルス対策への意識向上です。言葉で言うのは簡単なのですが、従業員のプライベートに関することもありますので、非常に難しいものでもあります。日本倉庫協会が公表したガイドラインでは、以下のような対策が必要とされています。
・ 従業員に対し、感染防止対策の重要性を理解させ、日常生活を含む行動変容を促す。このため、例えば、これまで新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が発表している「人との接触を8割減らす10のポイント」や「『新しい生活様式』の実践例」を周知するなどの取組を行う。
・ 新型コロナウイルス感染症から回復した者やその関係者が、会社内で差別されるなどの人権侵害を受けることのないよう、従業員を指導し、円滑な社会復帰のための十分な配慮を行う。
引用:倉庫業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン
まとめ
今回は、倉庫業界における新型コロナウイルス対策として、日本倉庫協会が公表した『新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン』についてご紹介してきました。新型コロナウイルスの感染拡大もあり、日本国内の職場は一気に働き方が変わってしまった…と言えるような状況になっています。5月末頃には感染拡大のスピードが鈍化したのですが、ここにきて再び増加傾向を見せているなど、まだまだ安心できない状況が続いているのです。
専門家の話によれば、今後も流行インフルエンザ同様、人類は新型コロナウイルスとの共存を目指さなければならないという様相が強くなっていますので、各企業は従業員の健康を守るための新たなルール作りが必要不可欠となるでしょう。特に、リモートワークの導入が難しい倉庫業界などは、どのようにして新型コロナウイルスに立ち向かうのか頭を悩ませているという事業者様が多いと思います。
まずは、従業員の意識改革や手洗い・うがい・消毒の徹底など、すぐにできる感染予防からスタートしましょう。
参考資料:日本倉庫協会『新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン』