HACCPの基礎知識。食品工場に潜む危害要因(ハザード)ってどんなものがある?

このサイトでも何度も紹介している食品衛生管理システムの一つである『HACCP(ハサップ)』。2020年6月からは、いよいよ改正食品衛生法が施行され、2021年6月までにHACCPによる衛生管理を導入しなければならないなど、本格的なHACCP制度化の運用が開始されるというスケジュールとなっています。このHACCPの制度化については、『原則全ての食品等事業者はHACCPに沿った衛生管理に取組むこと』と決められていることもあり、食品を取り扱う事業者様は、この1年間の経過措置期間中にHACCPの考えに沿った衛生管理ができるよう、さまざまな準備をしなければいけないのです。

近年世界中で義務化の流れとなっている『HACCP』ですが、これは「Hazard Analysis Critical Control Point」の頭文字をとったものであり、直訳すると「危害要因分析重要管理点」となるのです。つまり、HACCPというものは『危害要因』を分析し管理するというのが基本というわけです。
それでは、さまざまな食品を取り扱う食品工場などで考えた場合、工場内に潜む『危害要因』とはどのようなものが考えられるのでしょうか?
HACCPに取り組む際には、避けては通ることができない重要項目となりますので、この記事で食品工場などで勤務する方がおさえておきたい危害要因の種類についてご紹介していきます。

HACCP制度化が可決したけど…結局、今後はどうすればいいの?

危害要因(ハザード)とは何?

それではまず、HACCPに取り組む際には必ず押さえておかなければならない基礎知識として「危害要因となんだ?」と言う点について簡単に触れておきましょう。危害要因に関しては、以下のように説明されています。

健康に悪影響をもたらす原因となる可能性のある食品中の物質または食品の状態。危害要因ともいう。
例えば、有害な微生物、農薬、添加物や人の健康に悪影響を与えうる食品自体に含まれる化学物質などの生物学的、化学的または物理的な要因がある。
(参考)生物学的、化学的または物理的なハザード(危害要因)について
生物学的要因・・・食中毒菌、ウイルス、寄生虫など
化学的要因・・・・・農薬、添加物など
物理的要因・・・・・異物、放射線など
引用:コトバンク

この説明から分かるように、人が食品として摂取する物質のうち、食べた人に健康被害をもたらすものが危害要因とされているのです。ちなみに、危害要因はHACCPで言うところの『HA』の部分であり、タイトルとして用いられるくらいに重要なものとなります。
「HACCPに沿った衛生管理」を行うには、自社にどのような危害要因があるのか、またその危害要因が発生しうるポイントがどこなのかをしっかりと把握していかなければいけないのです。食品工場などに潜む危害要因については、いくつかの種類に分類することができますので、以下でもう少し詳しくご紹介していきましょう。

食品工場に潜む危害要因(ハザード)の種類とは?

それでは食品工場が注意しておきたいさまざまな危害要因をご紹介していきましょう。

生物的危害要因

生物的危害要因は、細菌やウイルス、カビなどの微生物に起因するものが大半と言われています。諸外国では、微生物などが引き起こす危害について、製造工程の失敗が大きく関係しているとしています。例えば、「CCP(Critical Control Point)」に当たる殺菌時に必要な時間や温度管理が不十分だったため、微生物が残存した…と言った場合や、洗浄が不十分で微生物が残存した…などと言った理由で食中毒などの健康被害が起こる可能性が増すとされています。

生物的危害要因を管理する際に注意しておかなければならないポイントは、温度や湿度の管理、加工などの時間管理、清掃などです。

> 生物的危害要因となる微生物はコチラ

物理的危害要因

物理的危害要因は、通常は食品中には存在しない硬質異物などで、その物理的な作用により健康被害をもたらす可能性があるものを指しています。わかりやすく言えば、食品への異物混入事故で、食品中にプラスチックや金属、ガラス片などが混入してしまい、それを人が口にした際、口の中を切ってしまった…歯が欠けてしまった…などと言うものです。

別記事でもご紹介していますが、食品工場にはさまざまな異物混入ポイントが存在していますので、それらをきちんと管理しなければいけません。

食品工場で起こりやすい異物混入とは?その原因と対策も考えてみましょう。

化学的危害要因

化学的危害要因についても、異物混入の一部ではあるのですが、物理的危害要因を超える非常に大きな被害が出てしまう危険があるものです。わかりやすく言うと、食品中に薬剤や洗剤、農薬などが混入してしまい、それを口にした人に健康被害が出てしまう…というものです。

ちなみに、化学的危害要因については、人為的に添加されるもの(使用基準が定められた食品添加物の誤計量など)と偶発的に混入してしまうもの(農薬や殺虫剤など)が存在するので注意しましょう。食品工場などでは、防虫対策として殺虫剤などを使用することも多いのですが、この場合は汚染防止対策や薬剤の洗浄などに注意する必要があります。他にも、原材料のチェックの強化や、工場内で使用する化学薬品の保管・使用量の厳重な管理が重要と言われています。なお、カナダなどの諸外国では、食物アレルゲンも化学的危害要因としてHACCPに基づき管理されているそうです。

> 化学的危害要因の詳細はコチラ

アレルギー表記について
食品中に含まれるアレルゲンは、包装紙などに表記されるようになっています。食品工場などでは、このアレルゲンの表記ミスも『危害要因』と認識しておかなければいけません。アレルゲンの表記ミスは、食品を食べたお客様がアレルギーを持っていた場合、『死』に至る可能性もある非常に大きな危害要因となるのです。商品を選択するお客様は、表記内容を信じて購入をするということを強く認識し、絶対に間違いは許されないと考えておきましょう。

まとめ

今回は、食品工場などに潜む危害要因についてご紹介してきました。本稿でご紹介したように、食品工場内には、食品の品質トラブルや健康被害を引き起こしてしまう可能性がある多岐にわたる危害要因が存在しているのです。制度化がスタートするHACCPに関しては、これらの危害要因を防ぐことができるチェックポイントを設定し、そこで管理を徹底する、記録に残すといった事で、製造する製品の安全性を高めていくという衛生管理システムとなります。

食品工場ごとに、取り扱う食品などが異なりますので、まずは自社の危害要因が何なのかをしっかりと検討し、その特徴や管理の際のポイントを理解していきましょう。

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