食品工場必見!代表的な食中毒の原因菌とその対抗手段をご紹介!

今回は、食品を取り扱う事業者であれば、必ず頭に入れておきたい、食中毒菌についてご紹介します。
食中毒といえば、梅雨時期から夏場にかけて増加するというイメージをお持ちの方が多いですが、実際には冬場などに患者数が増加する年も多く、年間を通じて発生しているものです。しかし、季節によって食中毒の原因となる菌などは異なりますので、食品を取り扱う事業者であれば、さまざまな食中毒の原因菌に関する知識が必要になります。
そこで今回は、代表的な食中毒菌と、その対抗手段についてご紹介します。

食中毒とは?

引用:厚生労働省『平成30年食中毒発生状況(概要版)』より

食中毒は『食品に起因する胃腸炎・神経障害などの中毒症の総称』と定義されており、多くは下痢や腹痛、嘔吐など、急性の胃腸障害をおこすものですが、発熱や頭痛を伴うこともあります。なお、普段の生活の中でも、食べ過ぎてしまった場合や飲みすぎてしまった際に、腹痛の症状が出たり下痢になったりすることはあるかと思いますが、これは食中毒ではありません。
食中毒というものは、有害な微生物や化学物質を含む飲食物を食べた際に、それが原因で健康障害が生じることを指しています。多くの食中毒は、一過性の症状で治癒するものですが、原因物質によっては重症化することもあり、最悪の場合、命に関わります。そのため、食中毒が疑われる場合は、自己判断せず医師の診断を受けましょう。
また、上述のように一般的に食中毒は夏場に急増するイメージを持っている方が多いですが、上図のように冬場に食中毒が急増する年もあります。これは、食中毒の原因菌の違いで、4月~10月までは細菌性食中毒が増加し、12月~3月のような低温で乾燥した環境ではウイルス性食中毒が優位になるからです。つまり、食中毒は、原因菌の違いはあるものの、一年中注意しておかなければいけないものだということです。

食中毒の原因菌について

それでは、さまざまある食中毒の原因菌とその対処法についてご紹介していきます。近年、ノロウィルスなどはメディアでも良く取り扱われるようになってきましたので、一度は耳にしたことがあると思います。しかし、食中毒の原因となる物質は他にもさまざまなものがあるのです。

腸管出血性大腸菌O157

腸管出血性大腸菌O157は、『ベロ毒素』という強力な毒素を産出する大腸菌の一種です。腸管出血性大腸菌O157による食中毒は、抵抗力の弱い乳幼児や小児、高齢者などが感染すると重症化しやすいと言われています。一般的に、腸管出血性大腸菌O157による食中毒は初夏から初秋にかけて特に注意が必要といわれていますが、気温の低い時期でも発生が確認されていることから、夏場以外でも注意が必要です。
腸管出血性大腸菌O157は、動物の腸内に生息しており、汚染された食肉やその加工品を飲食することで感染すると言われています。

腸管出血性大腸菌O157の対抗手段
対抗手段としては、衛生的な食材の取り扱いと十分な加熱調理、手洗い・消毒を徹底することです。肉類の調理の際には、中心部まで十分に加熱し、生肉を食べないことが重要です。また動物の糞尿によって汚染されている可能性がある野菜や井戸水の場合、野菜は良く洗浄する、井戸水は定期的に水質調査を行うなどを徹底する必要があります。
加熱処理で菌を死滅させる場合は、75℃で1分以上中心部まで加熱することが目安となります。なお、野菜の場合は100℃の湯で5秒程度湯がくのが有効とされます。

サルモネラ属菌

サルモネラは、人間をはじめ、牛や豚、にわとりなどの家畜の腸内、河川・下水など自然界に広く生息している細菌です。家庭内でも、ハエやゴキブリなどの昆虫や、犬・猫などのペットからも感染する可能性があります。原因となる食品は、牛、豚、鶏などの『食肉』や卵、感染者が調理の課程で触れた「二次汚染された食品」などです。このサルモネラは、少量の菌でも食中毒を発症する可能性があることや、乾燥に強いことが特徴です。

サルモネラ属菌の対抗手段
ほとんどの細菌やウイルスは、加熱調理することで死滅させることができます。したがって、肉類や卵を十分に加熱調理して食べることが、有効な対抗手段となります。なお、鶏肉はサルモネラ汚染率が20~30%もあると言われていますので、鶏肉や卵を調理する場合には特に加熱調理に注意する必要があります。

カンピロバクター

カンピロバクターは、豚・牛・鶏の腸内に生息する細菌です。また、犬や猫など、ペットの糞便にも含まれていることがあり、そこから感染する可能性もあるので注意が必要です。食中毒の原因となる食品は
、食肉やその加工食品で、特に鶏肉の感染率は高いと言われています。井戸水などを飲料水として使った場合に感染する可能性もあるので、定期的に井戸水の水質検査が必要です。

カンピロバクターの対抗手段
対処法としては、生肉は食べないようにし、肉や魚はもちろん、野菜なども過熱して食べれば安心です。特に肉類は、中心部まで75℃の熱で1分以上加熱する事が大切です。また、冷蔵庫などで保存している肉のドリップ(血を含む水分)が他の食品にかかることで二次汚染が発生しますので注意が必要です。調理器具なども良く洗浄し、除菌してから乾燥させましょう。

黄色ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌は、人や動物の傷口(特に化膿しているもの)やのど、鼻腔、皮ふなどに広く生息しています。健康な人でも、20〜30%の人が保菌していると言われており、食品を素手で扱う手作りの場合に、調理する人の手を介して食品が菌に汚染されることが多いです。黄色ブドウ球菌は、熱に強く、加熱では破壊できないエンテロトキシンという毒素を作ります。

黄色ブドウ球菌の対抗手段
食品を取り扱う場所では、手荒れがある方や化膿している傷がある方が、直接食品や調理器具に触れないようにする。また、手洗いや手指の消毒を徹底し、調理にあたっては、手袋、帽子、マスクを着用、調理器具の洗浄や殺菌を徹底することが大切です。

ノロウイルス

近年、食中毒の原因として非常に有名なものがノロウィルスです。ノロウィルスは、牡蠣、アサリ、ハマグリ、ホタテなどの二枚貝に生息しています。ノロウィルスによる食中毒は、秋口から春先に発症者が多く、冬型の食中毒ウィルスとして有名です。特に、人から人への感染力が非常に強いことが特徴で、二次感染による集団感染に至るケースが多いです。

ノロウイルスの対抗手段
ノロウィルスに感染している疑いがある人は食品の取り扱いに従事させないことが重要です。また、「流水・石けんによる手洗い」が最も重要で効果的な予防といわれており、これを徹底させる必要があります。食材に関しては、二枚貝の生食を避け、中心部まで85℃〜90℃で90秒以上十分に加熱して調理するようにしましょう。さらに、調理に使用したまな板や包丁はすぐに熱湯消毒します。
なお、嘔吐物や下痢便には大量のノロウィルスが含まれていますので、適切な処理が必要です。万一、環境が汚染された場合には、殺菌剤を利用した洗浄が必要になります。ただし、ノロウイルスは次亜塩素酸ナトリウムなどでなければ効果的な消毒ができません。

まとめ

今回は、さまざまある食中毒の原因菌の中でも、代表的な原因菌の対処法をご紹介しました。食品を取り扱う工場などであれば、一度でも食中毒を発生させてしまった場合、事業の継続すら難しくなる大事件にまで発展してしまいます。したがって、食中毒はどのようなものが原因となり発生するのかをきちんと調べ、従業員に対処法を徹底させなければいけないでしょう。
特に、食中毒は夏場に発生するものだとイメージしている方も多いのですが、本稿でご紹介したように、夏場だけでなく冬場などでもウィルスが原因となる食中毒があるのです。したがって、食中毒を発生させてしまう可能性がある物質については、徹底的に調べておくことをオススメします。

その他の食中毒菌について:厚生労働省『食中毒』ページ

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