さまざまな食品の製造・加工を行う工場では、徹底した衛生管理がとても重要で、製品の製造と同じくらい清掃が大切だと言えます。
清掃をおろそかにしてしまえば、食品への異物混入の原因ともなるカビや害虫の繁殖を招いてしまうこともあり、製品に不備が出てしまう危険性があるだけでなく、最悪の場合、食中毒などの問題が発生する可能性も高くなります。こういった、食品の不備は、企業の信用を揺るがす原因ともなり、事業の継続すら困難にしてしまうほどの問題に発展する可能性もあります。
そこで今回は、衛生管理の大前提となる、食品工場における清掃の重要性やその注意点についてご紹介したいと思います。一般の方からすると、『清掃』は目に見えている箇所のゴミやホコリをホウキで掃いたり、雑巾で拭いたりするものだとお思いの方が多いかと思いますが、徹底した衛生管理が求められる食品工場ではそれだけで良いとは言えないのです。そこで本稿では、食品工場で効率的に清掃を進めるためのポイントをご紹介します!
Contents
衛生管理の基本『5S』とその重要性
食品工場に限りませんが、安全で衛生的に工場を稼働させるために清掃は欠かせません。もちろん、この清掃とは、一般家庭のようにホウキでゴミを集めたり、雑巾で汚れを拭き取るだけではありません。
食品の製造・加工を行う現場では、衛生管理の基本として『5S活動』というものがあります。これは「整理(Seiri)」・「整頓(Seiton)」・「清掃(Seiso)」・「清潔(Seiketsu)」・「躾(Sitsuke)」の頭文字全てが『S』になることから名づけられたもので、食品工場の清掃においては、この5S活動がとても大切になります。
- 整理(Seiri)
必要なものと不要なを区別する。必要なものは保管、不要なものは処分すること。 - 整頓(Seiton)
必要なものを必要な時に使用できるよう決められた場所で管理すること。 - 清掃(Seiso)
ゴミ・汚れ・異物を取り除き、きれいな状態にすること。また、その過程で細部の点検も行います。 - 清潔(Seiketsu)
「整理・整頓・清掃」を徹底して、その状態を維持すること。 - 躾(Sitsuke)
「整理・整頓・清掃・清潔」のルールを決め、従業員にその知識とルールを守ることの習慣づけをすること。
安全で衛生的な工場の稼働を考えた場合、上記の5S活動がとても大切で、食品工場における清掃は『5S活動』そのものと言えるのではないかと筆者は考えています。
整理整頓ができていなければ、清掃も行き届きませんし、清掃が満足にできなければ工場を清潔に保つことができません。これからも分かるように、食品工場の衛生管理を考えた場合、この5S活動はとても重要なものと言えるのです。
さらに、工場の清掃は、単に「工場を清潔に保つ」ことだけが目的ではありません。食品工場というものは、さまざまな食品を加工するため、包丁やカッターなどの刃物も多く使用します。また、熱湯や食用油など、取り扱いを一つでも間違えると、大怪我をしてしまう危険性があるものが多く利用されているのです。したがって、これらの物が乱雑に取り扱われているのであれば、従業員が作業中に怪我をしてしまうリスクも非常に高くなってしまうのです。
つまり、食品工場において『清掃』とは、食品への異物混入や食中毒のリスクを減らすだけでなく、従業員を労働災害から守るためにもとても重要なものだと言えるのではないでしょうか。
また、食品工場の建設段階で、埃や虫の侵入を防ぐための設計をしたり、掃除がしやすくなるように隙間を作らない設計にしたり、ゾーニングや動線管理ができていると、衛生的かつ安全な食品工場を維持がしやすくなります。
食品工場の衛生管理対策を考えた設計のポイントについてはこちらから。
食品工場で効率的に清掃を進めるためのポイント
食品工場における清掃の重要性は分かっていただけたのではないでしょうか。それでは、上記を踏まえたうえで、効率よく清掃を進めるためのポイントについて考えていきましょう。
食品工場では、清掃が非常に重要だということは分かりますが、やはり清掃ばかりに労力をかけるわけにはいきませんので、可能な限り効率よく清掃が行えるよう以下のポイントを頭に入れておきましょう。
物の置き場所を決める(定位置管理)
上述したように、清掃の基本となるのは『整理・整頓』です。したがって、職場でのものの置き場所を決めて、整理・整頓の基準を従業員間で統一するようにしましょう。
これは『定位置管理』などとも呼ばれますが、ものの置き場所さえ決めてしまえば、必要になった時に必要なものを迅速に取り出すことも可能になり、作業効率も向上させることが期待できます。また、使い終わったものは、決められた位置に戻すだけですので、自然と整理・整頓が完了します。
作業場ごとに清掃用具をそろえる
清掃を行う時には、さまざまな用具が必要になります。しかし、これらの清掃用具は全ての場所で同じものを使うわけにはいきません。例えば、床を拭く雑巾で作業台も拭くなどといった使い方にすると、余計に汚れを広げてしまうことになりますので、場所によって必要な清掃用具をそろえましょう。
この場合、それぞれの清掃用具がどこで使用すべきものなのか間違えないように、作業場所ごとに用具の色を変えるなどの対策を行いましょう。
清掃手順のマニュアル化
常に清潔が求められる食品工場では、人によって清掃のレベルが低下することは許されません。したがって、従業員全員が同じレベルで清掃を行えるように清掃の手順はマニュアル化しましょう。
また、マニュアル化することによって、どこをどのように清掃すれば良いのか、全ての従業員が理解することとなり、効率よく清掃を進めることができるでしょう。
微生物や害虫にも注意
食品工場での清掃は、目に見える部分だけでなく、微生物学的にもきれいにすることが求められます。これは、作業を進めるために利用する設備や調理器具の洗浄・除菌も重要だということです。
調理器具などの消毒は、専用の洗剤などを利用する方法もありますが、手っ取り早いのが熱湯を利用することです。使用した調理器具や排水口に熱湯を流すだけでも、かなり消毒効果は高いと言われています。食品工場の場合は、熱湯を利用する機会も多いと思いますので、それらを清掃に再利用することで経費削減にもつながります。
また、製造の過程で出るごみの処理も忘れてはいけません。例えば、排水口にたまった生ごみを放置してしまうと、それだけで害虫や害獣が繁殖する可能性がありますので、適切な処理を行いましょう。
まとめ
今回は、工場の衛生管理の基本となる清掃の重要性と、効率よく清掃を進めるためのポイントについてご紹介してきました。
もちろん、ひとくちに食品工場と言っても、製造している食品や取り扱っている原材料が異なりますので、工場によって必要になる清掃には違いがあります。例えば、水をよく利用する工場では、常に水が流れているため、床があまり汚れないところもあるでしょう。一方では、油を大量に利用する工場では、床がベタベタになってしまうため、毎日丁寧な床の清掃が求められるなど、清掃に力を入れる場所は工場によって異なります。
したがって、工場を常に清潔に保つためには、自社の工場に最適な清掃マニュアルを作り、必要な清掃用具を用意することがとても重要になってきます。また、清掃が終わった後には、きちんとチェックする体制を作っておくのも、とても有効な手法と言えます。「誰が」「どの部分を」「いつ」清掃したのかチェック表にして残しておくなどすれば、清掃がきちんと行き届いているのかも簡単に確認ができるのではないでしょうか。
最近では、インターネットなどで少し調べると、効率的な清掃方法などもすぐに見つかる時代になっています。しかし、それらの情報は、一般的なマニュアルとなっているものですので、そのまま使用するのではなく、自社に合った形にアレンジして使うようにしましょう!