今回は、工場事業主の永遠の課題である『電気代削減』に関する注意点をご紹介していきたいと思います。さまざまな製品の製造を行う工場では、日々多くの大型設備を稼働させる必要があり、広大な敷地内で従業員が快適に作業できるようにするため、空調設備や照明設備の稼働に多額の電気代がかかってしまいます。当然、工場の稼働に必要不可欠なランニングコストではあるのですが、可能な限りこの電気代を削減できないものか…と誰しも考えると思います。
近年では、大量の電力を利用する工場などの大規模施設には、「電力会社を変更すれば、大幅に電気代の削減が可能です!」などと言う営業電話が良くかかっていることだと思います。電力自由化がスタートしたことにより、一般家庭でも新電力会社に入れ替えることで、電気代削減を目指すことが一般的になっている現在では、このような案内電話を鵜呑みにしてしまう事業者様も非常に多いようです。
しかし、注意が必要なのは、こういった電力自由化による電気代削減を悪用する詐欺業者も少なくないと言う点です。そこでこの記事では、有効な電気代削減手法として注目されている電力自由化に関する注意点を簡単にご紹介していきます。
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本当に工場が騙されているのか?
電力自由化を悪用した詐欺手口は、一般家庭がメインで工場や倉庫などの大規模施設は「無関係なのでは?」と考えている方が多いのではないでしょうか?しかし、電力自由化は大規模工場なら2000年3月からスタートしていますし、2004年4月や2005年4月には電力自由化の領域が拡大し、中小規模工場でもその恩恵を受けられるようになっていますので、全く無関係という話ではないのです。したがって、工場事業者の方であれば、電力自由化を悪用した詐欺に遭遇してしまう可能性があるということを認識しておいた方が良いでしょう。
そもそも、『電力自由化詐欺』とは、日々の稼働に大量の電気代がかかる工場や倉庫などに「電力会社の料金プランを見直すだけで電気代が大幅に安くなります!」「〇〇という装置を取り付ければ、今までかかっていた電気代が10%程度下げられます。」などと言うとても魅力的な話を持ち掛けられることからスタートします。そして最終的には、高額な装置を取り付けたものの電気代が変わらない…、と言ったことになるのです。
実際にあった電力自由化詐欺
ここまでの話を聞いても「自分には関係のない話だ!」「自分は慎重だから騙されるわけがない!」と、電力自由化詐欺は他人事だと考えてしまう人もいることでしょう。しかし、電力自由化詐欺というものは、決して他人事ではなく、現在でも多くの工場や倉庫で「電気代が安くなる」と言われ、詐欺手口に遭遇しているのです。実際に、2019年5月には、「関電から新電力会社に変えると電気代が下がる」などと言った手口を使って営業していた電力小売り代理店が特定商取引法違反で逮捕されています。実際の手口は以下のような流れで行われたそうです。
関電との契約を変更させるため、関電の代理店員や関連会社員らを装ったというもの。営業に訪れた際に「請求元を関電から変えると5%ほど料金が安くなる」「電気はこれまで通り関電からの供給になる」などとうその説明をして電気契約を結び、供給元を関電から東京都港区にある電気小売業者に変更させていた
引用:朝日新聞デジタル
ちなみに、この会社が同様の手口で交わした契約は約7千件(一般家庭含む)に及んでいると言われており、電力自由化を悪用した詐欺は決して珍しいものではないのです。
電力自由化詐欺の手口とは?
工場や倉庫の事業者様であれば、少しでも利益を伸ばすため、常に電気代削減を実現するための手段を探していることでしょう。悪徳業者は、そういった希望に付け込むため、非常に耳触りの良い話を持って近寄ってくるのです。ここでは、電力自由化詐欺に遭遇しないため、ぜひ覚えておいてほしい代表的な詐欺手口をご紹介しておきます。
①契約プランの変更を利用する
この手口の場合、大手電力会社の担当者を装って「この度、契約プランが新しくなったので、新たな書類にサインしていただけるでしょうか。」などと言って近づいてきます。この場合、同様の契約をしている方全てを回って契約変更手続きを行っているなどと説明をすることが多いようです。
しかし、電力会社との契約において、このような手段で契約プランの変更を行うようなことはほとんどありません。したがって、ご自身が連絡したわけでもないのに、契約プランの変更を理由に契約書にサインを求めてくる…などと言った手口はほとんど電力自由化詐欺と考えて良いと思います。まずは、現在契約している電力会社に確認の連絡をしましょう。
②検針票の詳細を聞き出そうとする
現在契約している電力会社の人間を装ってくるパターンで「毎月の電気代を削減するためのプランを提示しますので、検針票の詳細を教えてください。」などと言う手口で近づいてくる業者も多いようです。しかし、電力会社が検針票の内容を聞きだそうとするようなことはありませんので、絶対に検針票の詳細を教えてはいけません。
なぜなら、こういった業者は、検針票に書かれた供給地点特定番号やお客様番号を利用して電力自由化詐欺を行おうとしている可能性が高いのです。あまり知られていませんが、供給地点特定番号やお客様番号があれば、新たな電力会社との契約を悪徳業者が強制的に進めることも可能なのです。したがって、電力会社を装い検針票の詳細を聞いてくる場合には、電力自由化詐欺の可能性が高いと考えましょう。
③設備工事を理由にする
契約先の電力会社を装い「スマートメーターの設備工事のために訪問しました。工事を進めますので、工事費用をお支払いください」などと伝えられた場合、電力自由化詐欺の可能性が高いです。最近では、こういった設備工事を利用した詐欺手口が非常に多いと言われているのですが、スマートメーターの工事は実際に作業を行ったとしてもお金が発生することはありませんし、誰もいない状態でも交換などが必要であれば勝手に行います。
つまり、電力会社を装う、電力会社の依頼で来たなどと説明し、設備工事の請求や検針票の内容を聞き出そうとしてくる場合は、ほとんどのケースで電力自由化詐欺だと考えておきましょう。ちなみに、関西電力などの大手電力会社の公式サイトでも、こういった手口への注意喚起が出されていますので、確認しておきましょう。
参考:関西電力「関西電力の社員を装った悪質な訪問販売など、不審業者にご注意ください!」
まとめ
今回は、電力自由化を使った詐欺手口についてご紹介してきました。冒頭でご紹介したように、工場や倉庫などの大規模施設は、日々稼働するだけでも多額の電気代がかかってしまうため、少しでも利益を伸ばすためにもさまざまな電気代削減の取り組みを行っている施設が多いと思います。
工場や倉庫の電気代削減を実現するには、さまざまな手段があるのですが、その中でも新電力会社への切り替えによる方法は、コストもかけず簡単に行える有効な手法と説明されることが多いです。しかし、電力自由化による電気代削減については、それを詐欺に利用する悪徳業者も存在しているということを忘れてはいけません。したがって、本稿でご紹介したような手口に注意して、本当に電力会社を切り替えるだけで電気代が安くなるのかしっかりとシミュレーションするようにしましょう。
なお、電力会社を切り替えることで電気代削減を実現することもできるのは事実ですので、「新電力を勧めて来る業者は全て詐欺だ!」とは考えないようにしましょう。