今回は、鉄鋼や金属業界の工場で働こうと考えている方に、こういった業界でよく使用される専門用語をご紹介していきたいと思います。どの業界も同様に、それぞれの業界にはその業界人だけが理解している専門用語が多くあり、入社当初には言葉の意味が分からなくて困ってしまうという場面が少なくありません。こういった専門用語は、その業界で働いていれば徐々に覚えていくものですが、特定の業界に進もうと考えている人は、事前に覚えておいて損はありません。
そこで本稿では、金属業界の工場でよく利用される工場ワードをまとめてご紹介します。
Contents
- 1 工場ワード
- 1.1 厚板 (アツイタ)
- 1.2 ISO(アイソ、アイエスオー、イソ)
- 1.3 アーク溶接
- 1.4 インパクトレンチ、インパクトドライバー
- 1.5 NC旋盤(エヌシーセンバン)
- 1.6 NCフライス(エヌシーフライス)
- 1.7 オペレーター
- 1.8 開先加工(カイサキカコウ)
- 1.9 ガス溶接(ガスヨウセツ)
- 1.10 ガス切断(ガスセツダン)
- 1.11 カラー品(カラーヒン)
- 1.12 金型(カナガタ)
- 1.13 研削(ケンサク)
- 1.14 研磨(ケンマ)
- 1.15 工作機械(コウサクキカイ)
- 1.16 サビ止め塗装(サビドメトソウ)
- 1.17 酸洗い(サンアライ)
- 1.18 シャーリング
- 1.19 スポット溶接(スポットヨウセツ)
- 1.20 玉掛(タマカケ)
- 1.21 タップ溶接(タップヨウセツ)
- 1.22 デリック
- 1.23 肉盛溶接(ニクモリヨウセツ)
- 1.24 ノギス
- 1.25 非鉄金属
- 1.26 平鋼(ヒラコウ)
- 1.27 ビルドエッチ(BH)、ビルドティー(BT)
- 1.28 丸鋼(マルコウ)
- 1.29 溝形鋼(ミゾガタコウ)
- 1.30 ライン
- 1.31 ラフカット
- 2 まとめ
工場ワード
それでは、金属業界の現場でよく利用される工場ワードについてご紹介していきたいと思います。ここで紹介するものが全てではありませんが、業界の中では比較的メジャーな専門用語です。覚えておくと役に立つかもしれません。
厚板 (アツイタ)
鉄鋼業界で利用される用語で、厚みが6mm以上の鋼板を指します。さらに厚みが150mm以上の鋼板は極厚板と呼ばれ、逆に3mm以下の鋼板は薄板やそのまま鋼板と呼ばれます。
ISO(アイソ、アイエスオー、イソ)
金属関係の工場以外でもよく使用される用語です。ISOは「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」の略で、世界140か国以上が参加し国際標準規格として策定しているものです。ISOには、製品規格に関するものからISO9001のような品質管理体制自体の国際規格など、広く使われているものもあります。
アーク溶接
溶接手法の1つです。アーク溶接は、電気のアーク放電現象を利用して、各金属をつなぎ合わせる溶接技術のことです。現場で単純に『溶接』と言われた場合には、アーク溶接を指していることが多いでしょう。
インパクトレンチ、インパクトドライバー
ねじやボルト、ナットを簡単に回すことができる工具です。電気や圧縮空気を動力源としており、先端に取り付けられたソケットが回転することにより、ねじやボルトを回すことができます。現場では「インパクト」と略されることが多いです。
NC旋盤(エヌシーセンバン)
まず旋盤とは、円柱状の材料を刃物にあてて、それをろくろのように回して材料を削る工作機械です。NC(Numerically Control)旋盤は、この旋盤において材料と工具の位置を数値制御する装置のことです。
NCフライス(エヌシーフライス)
平面加工を行う代表的な工作機械にフライス盤があります。これは、上述した工作物を回転させる旋盤とは異なり、刃物を回転させ、工作物を取り付けたテーブルを移動させることによって切削を行う機械となります。このような中、NCフライスは、主軸とテーブルの位置や移動速度などがプログラミングによって制御される機械のことを指しています。
オペレーター
現場で工作機械など機械類の操作や運転を行う人のことです。上述した機械の操作を行う人はマシンオペレーター、フォークリフト等を運転する人をフォークリフトオペレーターなどと呼びます。
開先加工(カイサキカコウ)
これは、溶接材を多く盛れる受け皿を作り、接合強度を上げる目的に使用される加工です。鋼材のふちを適当な形状に切り拓く方法で、I形、V形、X形、レ形、K形、J形等様々な形状があります。
ガス溶接(ガスヨウセツ)
ガスを利用して金属の接着・加工を行う溶接手法の一つです。鉄、ステンレス、チタンなど、金属に合わせてガスの種類を使い分けます。
ガス切断(ガスセツダン)
ガスの熱によって溶断する切断方法の一つです。熱による歪みが出るなど、精密な切断は出来ませんが、同時に同じ形の物を作る際に利用されます。
カラー品(カラーヒン)
サビ止め塗料を施された鋼材のことです。カラーHやカラーパイプとも呼ばれます。
金型(カナガタ)
金属や樹脂(プラスチック)で作られる部品で、プレス加工や射出成型により製品を製造するための型です。
研削(ケンサク)
砥石などを利用して表面が滑らかになるよう削ることです。以下に紹介する研磨と似た作業ですが、こちらの方が削り取る作用を強調する言い方となります。
研磨(ケンマ)
研削と同じように工作物の表面を削ったり磨いたりすることです。こちらはどちらかというと、表面仕上げの意味合いが強く、磨き込んで表面にツヤを出すイメージです。
工作機械(コウサクキカイ)
製造・加工業界で広く使われる用語で、広義では各材料を必要な形状・寸法に加工する、表面状態を加工するなどの機械全般を指しています。
サビ止め塗装(サビドメトソウ)
鉄鋼業界で行われる表面処理の一つです。表面に塗装を施すことによって、サビの原因となる水や酸素を遮断し、鋼材の腐食を防ぐ目的で行われます。
酸洗い(サンアライ)
鋼材表面の酸化鉄を、硫酸や塩酸などの酸に浸けて除去する表面処理です。一般的にメッキ処理の前に行います。
シャーリング
鋼材の切断方法の一つです。これは、油圧などを利用し数十トンの力をかけ、鋼材をハサミのように押し切る切断方法となります。メリットは比較的に安価なことですが、直線的な切断しかできない、薄いものしか切断できないなどの制約があります。
スポット溶接(スポットヨウセツ)
金属の溶接手法の一つです。これは、2つの母材を圧着して電流を流し、それによって出る抵抗熱で金属を溶かし接合する技術です。
玉掛(タマカケ)
クレーンなどを利用する際、荷物にワイヤーロープを掛けたり外したりする作業のことです。
タップ溶接(タップヨウセツ)
溶接方法の一つで、仮付け溶接に利用される手法です。完全に一体化する必要はなく、決められた場所から動かなくなればいい程度にくっつける際に利用されます。
デリック
クレーンの一種です。原動機付のウィンチから繋がるワイヤーで本体ブームを操作し稼働するクレーンです。
肉盛溶接(ニクモリヨウセツ)
溶接手法の一つです。これは、母材同士の接合ではなく、硬化・耐食性の向上や補修、再生など目的によってそれに必要な金属を母材の表面に溶接する方法です。
ノギス
長さ100分の5mm単位まで精密に測定することができる測定機器です。現在ではデジタルノギスが普及しています。
非鉄金属
鉄及び鉄を主成分とした合金のことです。鋼以外のすべての金属を指しています。
平鋼(ヒラコウ)
帯状の鋼材のことを指します。幅と長さで定尺が決められるもので、別名フラットバー(FB)とも呼ばれます。
ビルドエッチ(BH)、ビルドティー(BT)
鋼板を溶接して、断面がH形になる鋼材がビルドエッチ、T形になる鋼材がビルドティーと呼ばれます。
丸鋼(マルコウ)
リブのない表面が滑らかな鉄筋のことです。別名でラウンドバー(RB)とも呼ばれます。皆さんも一度は見たことがあるリブ付きの鉄筋は異形鉄筋と言います。
溝形鋼(ミゾガタコウ)
断面が『コ』の字のように見える鋼材のことです。チャンネルなどとも呼ばれます。
ライン
生産ラインのことです。一般的には、流れ作業による組み立て工程となります。この生産ラインでの作業はライン作業と呼ばれます。
ラフカット
切断手法の一つで、だいたいの長さがあっていれば構わないときに使用される切断手法です。
まとめ
今回は、鉄鋼や金属業界の工場で使用される業界用語についてご紹介してきました。どの業界でも同じなのでしょうが、それぞれの業界では、専門用語が飛び交っており、一般の方からすれば何を言っているのかわからない…なんてことは珍しくありません。特に、金属を取り扱う工場であれば、材料に関する用語、加工に関する用語、作業に関する用語と非常に多岐にわたる専門用語があり、最初のうちは専門用語を覚えるだけでも一苦労だというお話は非常によく耳にします。
もちろん、上述した以外にもいろいろな専門用語がありますので、金属業界を目指しているという人は予め知識として覚えておくことをオススメします。