これから本格的な夏を迎えることになりますが、倉庫や工場などでは作業員の暑さ対策が非常に重要になってくることでしょう。皆さんも薄々感じていることでしょうが、日本の夏の気温は年々上昇していると言われており、6月頃からはテレビなどでも熱中症への注意喚起が頻繁になされているほどです。
屋内での作業となる工場や倉庫は、屋外の労働環境と比較すればその過酷さは多少マシと思われる方が多いのですが、広大な施設となるため、エアコンなどの空調もききにくいことが多く、風通しも良くない労働環境となりますので、室内は大変な気温となってしまうことも珍しくないのです。
こういった、夏の『暑さ』は不快に感じるだけで済めば良いのですが、室内が暑すぎれば作業効率も落ちてしまいますし、最悪の場合、作業員が熱中症になってしまう…など、健康被害を引き起こしてしまう恐れまであるのです。
そこでこの記事では、これからやってくる本格的な夏に向けて、工場や倉庫などの施設で行っていきたい暑さ対策についてご紹介します。
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日本の夏は年々暑くなっている!
日本の夏が年々暑くなっているという情報は、テレビのニュースなどでも頻繁に紹介されており、自分たちの普段の生活の中でも体感することが多いのではないでしょうか?上の画像は、東洋経済オンラインが紹介した日本の夏が年々暑くなっているということを裏付けしたデータで、以下のようなデータをグラフ化したものです。
このヒートマップは、夏期(6月から9月)の東京における過去140年間の日別平均気温を表したものだ。横軸は月、縦軸は年(1876年から2018年)を示している。つまり、ヒートマップの下に行くほど現代に近づく。それぞれのセルの色はその日の平均気温が色で表現されている。「18度未満」「18度以上20度未満」「20度以上22度未満」……「30度以上」と、2度刻みで青から黄緑・黄色を経て赤へと変わっていく。たとえば平均気温が20度なら黄緑、31度なら濃い赤となる。
引用:東洋経済オンラインより
このグラフからも分かるように、日本の夏はどんどん暑くなっており、さらに長期化しているのです。気象庁のデータによると、長期的な視点で見た場合、さまざまな変動を繰り返しているものの、日本の夏の気温は徐々に上昇しており、100年あたり1.11℃の割合で上昇しているとされています。
平成30年には職場での熱中症が急増!
夏の気温が暑くなるということは、それだけ熱中症になってしまう危険が高くなるということです。
皆さんも、夏の暑い日に体調が悪くなった…などといった経験をしたことがある方も多いと思います。夏場になると毎日のようにテレビなどで熱中症への注意喚起がなされているのですが、さまざまな空調設備が進化した現在でも熱中症による事故を0件にすることはできていないのです。
それどころか、平成30年には職場での熱中症死亡事故が28件と、平成29年と比較すると2倍に増加したというデータもあるのです。さらにこの年は、熱中症による死傷者数(死亡者数と休業4日以上の業務上疾病者数を加えた数)が1,178人と、過去10年で最多となっています。例年であれば、400~500人程度の死傷者数だったのですが、さまざまな対策がとられるようになってきた近年でも、これだけの数の人が熱中症になってしまっているのです。
ちなみに、職種別にみた場合でも、前年に熱中症による死亡者がいなかった製造業で5人、運送業で4人と、屋内作業での熱中症事故の増加が目立つと報告されていました。つまり、工場や倉庫など、屋内での作業だからと言って、決して安心とは言えない状況なのです。
参考データ:厚生労働省 平成30年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」
工場や倉庫での熱中症対策について
ここまでの内容で、日本の夏が労働者にとってどんどん過酷になっているということがわかっていただけたと思います。特に熱中症に関しては、直射日光を受ける屋外で作業を行う時に注意しなければならない問題で、屋内での作業となる工場や倉庫では関係ない…と考えている方も未だにいるようです。
しかし、上述したように「夏は暑いのは当たり前」「暑いくらいでバテるなんてだらしない」などと言っていられるような時代ではなくなっているのです。特に工場や倉庫などの労働環境を考えてみた場合、外壁や屋根が熱せられることによってその熱が室内まで伝わりやすくなっている…という施設も多く、空調の効きが良くない施設となると、真夏は屋内でも気温が40℃を超えてしまうことも珍しくないのです。
このような室内気温に加えて、風の通りもないとなれば人体に対して非常に危険な水準であることは誰もがイメージできることでしょう。したがって、夏場の工場や倉庫では、作業員に対する熱中症対策が大切になっているのです。それでは、工場や倉庫における暑さ対策としてどのようなことができるのでしょうか?以下で代表的な手法を見ていきましょう。
従業員の意識付けと水分補給
最も重要と言えるのが、従業員を管理する人や実際の作業者が、熱中症に対する正しい知識を持って対策に乗り出すということです。したがって、まずは「工場(倉庫)内は、熱中症になる可能性がある危険なレベルの暑い環境」ということを全員に認識させておきましょう。
その上で、作業中に十分な休息や水分補給ができるよう、管理する立場の人間が目を光らせておく必要があります。
スポットクーラーの導入
エアコンなどの空調設備が設置しづらい…設置しても面積が広大で効きづらい…などと言った施設では、スポットクラーの導入が効果的です。人が通る場所にスポットクラーを設置しておくだけで、かなりの冷却効果が得られると言われています。
ただし、設置のためにはそれなりのスペースが必要になる…排熱のことを考えなければならない…導入コストがかかる…などの問題もあります。なお、スポットクーラーはあくまでも『スポット』的に冷却するもので、施設全体を冷やすことはできないと考えておきましょう。
屋根に冷却対策を行う
工場や倉庫などの室温が上昇してしまう理由に、屋根が直射日光で熱せられ、その熱が室内に伝わるからというものがあります。真夏ともなると、直射日光を受けた屋根表面は70℃以上の温度になることもあり、その熱が室内に伝わることで空調設備の効きを悪くするのです。したがって、室内に伝わる熱量を少なくするため、屋根の冷却対策も有効です。
例えば、屋根にスプリンクラーを設置して冷やす方法や、断熱(遮熱)効果のある塗料で屋根塗装を行う、遮熱シートを屋根に張り付けるなどの対策が有効です。
作業員の服装を工夫する
近年、建設業界などで注目されている暑さ対策として『空調服』なるものが存在します。空調服は、作業着にファンが取り付けられており、着衣内で空気を循環させることができるのです。一着当たりの値段は張りますが、場所を問わず作業員一人一人を確実に冷やすことができるためとてもオススメです。
他にも、作業着に冷却材を入れておくようなポケットがつけられたものなど、熱中症対策用の作業着が販売されていますので、そういったものを支給するのも効果的です。
まとめ
今回は、工場や倉庫などで有効と考えられる熱中症対策についてご紹介してきました。この記事でもご紹介したように、日本の夏は年々気温が上昇しており熱中症のリスクもそれに比例して高くなっていると考えられるのです。一昔前までであれば、熱中症になんてなるのは軟弱だからだ…と考えていた方もいるのでしょうが、どれだけ鍛えていたとしても熱中症の危険はあるのです。
特に工場や倉庫などは、施設の構造上、室内の気温が上昇しやすく、風の通りも悪くなりがちです。さらに、そういった環境で人の動きが必ずあるのですから、「室内だから安心!」なんてことは決して言えないのです。施設によっては、保管するものや、製造する製品の関係上、空調をフル稼働させるわけにはいかない…という場合もあるかと思います。その場合は、作業員の健康を守るために他の対策で補うようにしましょう。