初期費用を売電収入で賄うことができる「FIT制度」が整った事により、東日本大震災以降は住宅用太陽光発電の普及率が年々伸びていると言われています。日本国内における住宅用太陽光発電の普及率は、2018年度で約6%(約322万戸)程度と言われていますので、まだまだ導入していない住宅の方が多いのが実情です。しかし、日本の太陽光発電導入量は、2012年時点で世界5位にランクインしているなど、実は太陽光発電大国でもあるのです。
こういった状況の中、近年では企業でも再生可能エネルギーへの注目度が高くなっており、工場や倉庫などの広大な屋根スペースに太陽光発電設備が導入されることも増加しています。太陽光発電設備は、皆さんもご存知の通り、太陽光を電力に変換し、施設の運営のために必要になる電気を自家発電することができるため、大幅な電気代削減が期待できます。
さらに、この間にさまざまな技術の進歩もあって、発電効率の向上や導入コストの低下など、太陽光発電設備を導入するためのハードルが下がってきているのです。
それでは、広大な屋根スペースがある倉庫などに太陽光発電を導入することには、どういったメリットが考えられるのでしょうか?当然、稼働にかかる電気代を削減できるというメリットは大きいのですが、その他にもさまざまなメリットが考えられるのです。この記事では、実際に太陽光発電を導入した場合に考えられるメリットをご紹介します。
Contents
企業で太陽光発電設備が注目されている理由は?
それでは、近年企業の間でも太陽光発電設備への注目度が高くなっている理由から簡単にご紹介しておきましょう。
電気代の削減
最も大きな理由は、「施設の稼働にかかる電気代削減」でしょう。どのような施設でも、電気代削減は永遠のテーマとなるのですが、特に工場や倉庫などは、大型設備を使用することも多いですし、大規模な施設になりがちだということから、空調設備にも多大な電気代がかかってしまいます。そこで、稼働にかかる電気の一部を自家発電することで電気代の削減を実現しようと考えているのです。
さらに、原子力発電の再稼働が極めて難しい国内情勢では、火力発電によって電力需要を賄うことになっています。しかし、火力発電に使用される燃料は、輸送コストの影響を受けてしまうこともあり、電気料金そのものが高騰してしまい、企業の負担が大きくなる可能性があると考えられているのです。
太陽光発電の導入コストが下がってきたから
「導入に多大なコストがかかる…」と考えられている太陽光発電設備ですが、年々導入コストが低下して導入ハードルがかなり下がってきているのも大きな理由です。
これは、世界中で「化石燃料から再生可能エネルギーへの転換」という流れがあることから、日本国内でも国を挙げて太陽光発電の普及促進に力を入れていることが大きいです。さらに、太陽光発電メーカーの技術が年々高くなっており、発電効率の向上や製品自体の低価格化が進んでいるのも大きな要因です。
実際に、2011年には太陽光発電の平均的な価格が「1kwあたり52万円」だったものが、2019年には半額以下まで下がっているのです。こういった理由で、導入がしやすくなっているという点から、太陽光発電の導入に注目する企業が増加しているのです。
企業イメージの向上
地球温暖化など、さまざまな環境問題が注目されている近年では、大量のエネルギーを消費する企業の改善が必要不可欠とされています。したがって、太陽光発電設備を導入し、稼働に必要なエネルギーを自家発電することは『環境問題に取り組む企業』というアピールになるのです。
さらに、事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットする協働イニシアチブ『RE100』などと言った取り組みが登場しており、国内でもこれに加盟する大企業が増加しているのです。RE100に加盟している大企業は、再エネ電源を目指す会社を取引先として選択するのが一般的になると言われていることから、再エネ電源の導入による取引チャンスの拡大を目指す中小企業が増えていると言われています。
災害による停電に備えるため
もともと地震や台風などの自然災害が非常に多い国として有名な日本では、さまざまな災害への備えが必要だとされています。さらに近年では、地球温暖化による気候変動などの影響もあり、集中豪雨による水害などの増加、日本に上陸する台風の大型化などが問題視されているのです。
実際に、ここ数年のことを考えても、集中豪雨や巨大台風によって誰も想像もし得なかったほどの甚大な被害が生じているのです。こういった自然災害では、電力の供給がストップしてしまうことも珍しくありません。場合によっては一週間以上も停電被害が続いてしまう…なんてことも考えられるのです。そのため、不測の事態に備えておく目的で、各企業が停電時でも電力の確保ができる太陽光発電の導入に踏み切っているのです。
倉庫屋根に太陽光発電を導入する副次効果
太陽光発電を導入する企業が増えているのは、上述したように電気料金が高騰する可能性がある中、大幅な電気代削減を実現できることや、頻発する災害の備えになるということが大きいです。しかし倉庫屋根に太陽光発電を導入した場合、これ以外のメリットもあるのです。
以下で、太陽光発電の導入で得られる副次効果もご紹介しておきましょう。
スペースの有効活用と屋根の遮熱効果
どのような建物であっても、屋上スペースとして活用しない屋根というものは、屋根面がデッドスペースとなってしまいます。しかし、太陽光発電設備は、こういったデッドスペースを有効活用することができるのです。太陽光発電設備の設置のために、無理やりスペースを作る必要などもなく、今まで「活用できていなかった」スペースを使って電気代削減や企業イメージの向上が目指せるようになるのは大きなメリットと言えるでしょう。
さらに、太陽光パネルで屋根を覆うことは、屋根の遮熱効果を向上させることができるという副次効果もあります。夏場の強い日差しを受けた屋根は、表面温度が80℃を超えるような高温になることもあり、この熱が室内に伝わることで空調設備の負荷が増えてしまうのです。屋根に太陽光パネルを設置すれば、屋根面に直射日光が当たらなくなります。このため、屋根表面および室内温度が上がりにくくなり、空調コスト削減を目指すことが可能です。
税制優遇措置が用意されている
企業の太陽光発電設備導入には、さまざまな税制優遇措置が用意されています。以下にその一部をご紹介しておきますので、ぜひ確認しておきましょう。
名称 | 参考リンク |
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再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置 | 詳細はコチラ |
省エネ再エネ高度化投資促進税制 | 詳細はコチラ |
中小企業経営強化税制 | 詳細はコチラ |
まとめ
今回は、企業が太陽光発電に注目する理由や、実際に導入した場合に得られるメリットについてご紹介してきました。この記事でご紹介したように、電気料金の高騰や環境問題への取り組み姿勢、頻発する災害への備えなどが背景となり、企業からの太陽光発電への注目度が年々高くなっています。さらに、太陽光発電の導入にかかるコストが低下してきたこともあり、中小企業などでも前向きに再エネ電源の導入を検討し始めている企業が多くなっていると言われているのです。
太陽光発電のデメリットは、低下してきたとはいえそれなりの導入コストがかかってしまうことだと思います。しかし、この導入コストに関しても、国が各種補助金を用意していますので、少ない負担で導入することも可能だと思います。なお、国が用意している補助金などは、ほとんどの場合『自家消費型』の太陽光発電が対象となっていますので、そういった部分はしっかりと調べたうえで検討しましょう。